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慣れた手つきで部屋を選んでエレベーターに乗る。間接照明がムーディーな空間を演出する廊下を手を引かれながら部屋まで歩いて、分厚い鉄のドアがバタン、と音を立てて閉まる。
ロクな抵抗も出来てなかったがドアが閉まったことで一層どうしようもないと思ってしまう。
誘われるがまま大きなベッドの上に座り込む。
男は黒のマフラーと上着をソファーへと投げ捨てて、一色の目の前に立った。
覚悟は決まったか。
男の目がそう問いかけてきている。
一色は震える手で自らモッズコートを脱いでそのままベッドへ寝転がる。こんなこと本当はしたくない、そう拒否する自分と身体中を渦巻く熱に抗えない自分がいた。
「素直でよろしい」
男はそう笑うと一色の上に跨ると、首筋に噛み付いた。
「………っ!」
薄いロンTの裾から男の節だった大きな手が入ってくる。薄い腹筋をなぞるかのようにすぅっと触られると、もどかしさと擽ったさに一色の身体はぴくり、と反応した。
「男は?ハジメテか?」
耳に残る低いバリトンボイス。言葉と共に耳朶をかりっと噛まれる。
「っあ、……は、じめて、じゃっ、ない」
ゆるりと耳の縁取りを確かめるかのように舐められ、喰まれる。同時に胸の飾りをコリコリと玩具のように指が弄る。
そんなところ触って何があると言うんだ、そう思うのに抓って弾かれて、指で優しく触れられると、確かに熱が集まるような気がした。
「ふぅん。お前は初めてでも、コイツは経験済みのようだ」
「っ、ん!…な、にっ言って、」
何と無く気恥ずかしくて、負けたくなくて一色がついた嘘も何故かこの男にはバレているようだった。
「……あっ!や、ちょ、待っ、んんっ」
男の手がすでに勃起していた一色のモノに触れる。器用にズボンを脱がされてボクサーパンツのみになった一色のソレはしっかりと形を主張していた。
「一体いつから我慢してたんだか」
男の呆れたような声に、もう一色は返事が出来なかった。直接触れられて上下に擦られれば我慢していたせいもあって何も考えられないくらい気持ちよくなっていた。
どこかで声は出したくないと理性が叫ぶ。でも、男の指は巧みに動いてその理性を押さえつけた。
グチュグチュと卑猥な音がする。
「あっ、ん、んんっ、ああ…んっ!!」
口からは喘ぎ声しか漏れなくなって情けなさと気持ち良さに目尻に涙が浮かぶ。せめてもの抵抗で顔を片腕で覆って、もう一方で男の腕をやんわりと掴むその様は一層煽情的だった。
「はっ…お前、それは逆効果だろ」
「あああっ、んっ!!!」
グリッと亀頭を親指で抉られて一色は呆気なく白濁を放った。初対面の男にこんなに早くイかされるとは。
「……っ、はっ、はぁ……」
しばしの脱力感。男はベッドの上にあるティッシュで手を拭って一色にちらりと視線を向ける。
「どうだ?おさまったか?」
そう問われて少し頭がクリアになった。腕を退けて男を見れば変わらず不遜な態度で一色を見下ろしていた。
「お陰様で」
起き上がってティッシュで腹についた精液を乱暴に拭う。布団で下を隠してから男に向き直った。
さっきまで身体に巣食っていた熱は収まっている。震えも止まったし、倦怠感もない。
「貴方、何者ですか」
「答えてやる。でも、その前に」
男は少し乱れたオールバックをかきあげて
「俺のコレをおさめろよ?」
一色の前に大きくなった自らのモノを見せた。
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