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午後7時すぎ。
圭太からメッセージが届いた。
『予定通り8時ごろそっちに着くよ!久しぶりに悠ちゃんの作るあのお酒が飲みたいなー!』
そんなメッセージを見て一色は困ったように眉を下げる。圭太のいうあのお酒とはチョコレートリキュールをウォッカで割って、生クリーム、ナッツ、ミントを加えたもの。圭太に一度作って出してみたら凄く気に入られてそれから事あるごとに作るはめになった。
チョコレートリキュール、ウォッカ、ナッツはあるが生クリームがない。生クリームがなくても問題なくお酒自体は作れる。けれど。
「………、買いにいきますか」
美味しいと笑う圭太の顔が頭をよぎってしまった。久しぶりに帰ってくるし、きっと疲れているだろう。圭太と出会って早3年、一色はいつまで経っても圭太に甘い。
橘に一声かけていこうと2階に上がる。
開きっぱなしの事務所のドアから中を覗くと橘は入り口に背を向けてソファーに座っていた。
「は?その仕事は以前にも断っただろう。……何度言われても同じだ」
どうやら仕事の電話をしているらしい。揉めているのかいつもよりピリピリした空気が背中から伝わってくる。
触らぬ神に祟りなし。一色は小声でその背中に向かって買い物行ってきますと伝えてそっとドアを閉めた。
確か近くのコンビニにも生クリームはあったはず。
財布をポケットに入れて事務所を出た。
外はようやく少し薄暗くなってきたかというくらい。昼間は汗ばむくらいだったがこの時間になるとまだ僅かに肌寒い。薄手のカーディガンをしっかりと羽織直してやや足早に歩き出す。
程なくしてコンビニに到着。小さなやる気のない、いらっしゃせーに迎えられて生クリームが置いてある棚へ。
「……マジですか」
いつもならここに置いてあるはずの生クリームがない。一色はレジにいる若いピンク髪の店員に声を掛けた。
「生クリームが棚にないんですがもう在庫切れですか?」
「……あー、すいません。さっき2個売れちゃったんスよ。普段あんま売れねぇのになんでスかね。今日なんか生クリームパーティーでもあるんすか、え、生クリームパーティーってなんかエロくないスか」
「そうですか、ありがとうございます」
最後なんか言っていたが言語が違っていた為スルーして前半部分にお礼を述べて、変わらずやる気のないあざっしたーに見送られ店を出た。無い物は仕方がない。スーパーまで行くしかない。ここからスーパーまで早歩きなら10分ちょっと。今からなら急げば圭太が帰ってくるまでになんとか戻れるだろう。
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