引っ越しの準備中に

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気が付いたら、驚いた表情になっていて、 「お姉ちゃん…?」 口から出た言葉。 一言で表せるほどの言葉なんてない。 そんな言葉があったら、この気持ちになることなんて一生なかっただろう。 「…」 静かに涙を流した母。 静かに流れたこの瞬間。 私には、姉がいた。 私の6つ上で、私と真逆なタイプで明るくて誰からでも頼られるような、優しい人だったらしい。 「よーっ!結奈ちゃん!」 「おじさん!おはよう!」 愛嬌があり。 「おはよう!気をつけて行けよ!」 「はーい!」 元気いっぱいで。 「おはよう!おばあちゃん!」 「おはよう」 「おばあちゃん、大丈夫?」 彼女は、荷物を横断歩道を渡るおばあちゃんのを運んであげたり、道案内をしたりと。 思いやりがあり、優しい。 そして、頼りがいのある存在だった。 学校に行っても… 「結奈ちゃん!一緒に遊ぼう!」 「うん!」 「結奈ちゃん!私も混ぜて!」 「いいよ!」 「結奈ちゃん!結奈ちゃん!」 彼女のところには人が集まるほどの人気者だった。 そんな彼女、姉は… 私のせいで… 薄らと少しずつ、思い出していく。 「お姉ちゃん…」 そうだ!私には… 「お姉ちゃん!」 そうよく呼びかけ、追いかけていた。 幼い頃から人見知りの私は、いつもお姉ちゃんの後ろに隠れて… なぜ、私は… あんなに大好きな大好きなお姉ちゃんのことを… 前が見えないくらい目には涙が溢れた。 どんどんあの時のことを思い出していく。 どうして、私は…私は… 忘れていたのだろう。 忘れてしまっていたのだろう。
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