1.かなり斜め上から社長の告白(笑顔でお断り)

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  「お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる」  はいぃ?  私、杉浦紗那(すぎうらさな)、二十八歳。職業・社長秘書。  今しがた、自身の勤め先会社の社長である、福士成彰(ふくしなりあき)に呼び出されたので、社長室の扉をノックの後に失礼します、とキリっと背筋を伸ばし、シャキシャキと歩き、きっちり斜め四十五度の角度でお辞儀をして、お呼びで御座いますか、社長、と要件を聞いたところだ。  そしたら、そしたら・・・・ 「何度も言わせるな、紗那。お前が好きだから、俺が仕方なく付き合ってやると言っているのだ」 「い・み・が・わ・か・り・ま・せ・ん・が?」(笑顔)  ブリザード笑顔を顔面に張り付け、社長の告白もどきを一蹴した。  そんな告白の仕方、ある?  初めて聞いたわ、そんなの! 「この俺が、直々にお前と付き合ってやると言っているのだ。解らんヤツだな」 「お・こ・と・わ・り」(笑顔) 「まずはデートだ。食事へ行こう! 紗那の好物は何だ? 俺はステーキが好きだ。やっぱ精がつくもを食べなきゃな! あ、でも、一番好きなのはそのドSなお前の瞳だ」  人の話を聞け!  それより、赤の他人に向かって頬を染めながら、(しかも部下で秘書の私に対して)ドSなお前の瞳が好きとか言っちゃう?  頭がおかしいとしか思えない。
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