1.かなり斜め上から社長の告白(笑顔でお断り)

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 不況で苦しい上に取引先の殆どを失い、下請けの仕事を貰えなくなってしまったスギウラ工業はリストラを余儀なくされ、腕のいい職人を失い、赤字が膨らんで借金のみが残された。工場を売っても赤字、いよいよ一家で首でもくくるかと言っていた父に、救いの手を差し伸べてくれたのが、このフクシだ。  株式会社フクシはスニーカー部門で様々な特許を取り、自社の商品開発に力を入れつつ、海外の既製品や、それを模範させたオリジナルの靴を入荷・販売している中堅のシューズメーカー。そんなフクシの特許を取ったスニーカーの靴底を作っていたのが、父の工場。  フクシは工場ごとスギウラを買収して経営権を取得してくれたため、彼等会社の子会社として運営を継続が可能となった。スギウラは、フクシのお陰で再建できたのだ。  経営権はフクシにあるが、スギウラ工業という名前のまま会社(というか工場)は存続、離職した職人を出来る限り呼び戻し、元通りの工場ラインで生産も出来ている。私はもともとスギウラの経理を担当していたから仕事があぶれたが、社長秘書に丁度空きが出た為、この位置に滑り込んだという訳。これが、一年前の話。
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