第零章 最初の事件 ~ある夜~

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第零章 最初の事件 ~ある夜~

誰もが、寝静まった川崎市某区の 住宅街……。 暑い夜、熱帯夜だ。 どの家の窓もピシッと 固く閉められている。 冷房なしには、寝られない、 むしむしとした夜が続く、ここ最近。 木造建ての一軒家の中、 母と娘が、冷房を効かせて、  熟睡している。 娘は、幸せな夢を 見ているかのような寝顔だ。 その時。 その家のそばを、若い女性が 全速力で駆け抜けて行った。 恐怖に引き攣った表情。 何かから、逃げるかのように。 無我夢中に走っている。 後ろから、彼女を追いかける足音と 黒い影が刻々と迫ってくるのが分かる。 また、聞こえる怒声……ではなく、 甘い囁きのような、男の声。 恋愛関係にある男女の喧嘩か? 酒に酔って、真夜中に、 二人で走っているのか? 別れ話の末、男が未練がましく、 女を追いかけているのか? だが、前を行く、彼女の形相は、 それを否定するものだった。 恐怖に、顔は真っ青である。 フッと、彼女の脳裏に浮かぶ、 小学生時代の出来事。 意味不明だが、こんな生きるか 死ぬかの瀬戸際に、昔のことが、 フラシュバックした‼ …………………… 桜の花が舞う春。 10年以上も前。 愛媛県の松山市。
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