序章⑤

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そして、私は、考えていました。 式の前日には、雪子おばさんを 式場のホテルに泊めてあげて、 いえ、私も一緒に泊まって、二人で ホテルのレストランでディナーしたいなぁ……と。 雪子おばさんへの感謝の気持ちと言う素直な 面もありましたが、 それと同時に、もう一つ、 式の前夜に一人ぼっちはイヤでした。 式の前夜は、家族と過ごしたかった。 家族水入らず……が良かった。 そして、両親がいない私にとって、 まさに、雪子おばさんがだけが、 結婚式前では唯一の家族であり、 そして、まさに母でもあるわけです。 そんなわけで、 雪子おばさんと、式の前日は、 千葉のホテルでゆっくりと過ごして、 感謝の気持ちをちゃんと伝えて、 親孝行したいなぁと、 ずっと考えていました。 でも、私のプランは失敗に終わりました。 希望は、叶わないことになったのです。 それとなく電話で訊いてみると、 雪子おばさんからは、土曜日の朝に 羽田に着くと言う返事でした。 どうしても、金曜日は、外せない用事が あるようで……。 明るい声で、電話を切ったものの、 正直かなり残念と言うか、 心が挫けそうでした。 式の先日、唯一の血縁者である 雪子おばさんと過ごす……と言う 私のプランは、おじゃんになって しまったのです。 もちろん、彼は、彼の家族と 食事するだろうと言うことは、 私も大人ですから分かっていました。 そして、大人であり、嫁いでいく身として、 こっちから、 「私も、御一緒して良いですか?」 とか、「私が行って良いか、訊いて。」 とは死んでも言えません。 式の前夜を彼と過ごすと言う線は…… あり得ませんでした。 だから、私は色々と考えてみました。 未成年のお初やカノはダメでも、 新婚さんなら……。 でも、新婚さんも、その名の通り、 結婚したてのホヤホヤです。 夜まで、付き合わせるのは 申し訳ありません。 いろいろな顔が浮かびますが、 やっぱりムリかな……と言う結論に 行きつきます。 みんな仕事がありますし、 家庭もありますし、都合もあるのです。 それに、翌日は丸1日、私たちの式、 披露宴につき合ってもらうのですから。 「誰も誘えないな。」、これが、 私の出した答えでした。 式の前夜は、家族の温かい雰囲気の中で 過ごしたかった。 雪子おばさんとなら、 それが叶っていたはず。 しかし、普通の女性にとっては 当たり前のようなことも、 私にとっては、夢のまた夢。 かなわない夢なんだと、 自分に言い聞かせて、 今週まで過ごしてきました。 そんな、私の寂しさ、私の心の痛みを、 彼のお母さんは察してくれたんだと 思います。 いえ、察してくれたんです。 彼のお母さんなら、それ位、できます。 そして、式の前日、金曜日を 私にとって最高の一日にしてくれたのです。 まさに、孤独な一日、一人で過ごす式前夜、 バッドフライデーでなくて、 癒されてキレイになれる日、 家族団欒で過ごせる式前夜、 グッドフライデーにしてくれました。 〔手々・LOSS・タイム〕&彼の 家族との夕食……。 幸せすぎて、涙が出そうです。 癒されてキレイになれる日、 家族団欒で過ごせる式前夜、 グッドフライデーにしてくれました。 〔手々・LOSS・タイム〕&彼の家族との 夕食……。 幸せすぎて、涙が出そうです。
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