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一日の用事を済ませた所で伊武から連絡があった。今日はマンションに来てほしいと言う。惣太は田中と別れて伊武の部屋に向かった。
部屋へ入ると入口に大きなトランクが積み重なっていた。なんだろうと思っていると、伊武が声を掛けてきた。
「明日から数日間、また先生と一緒にいられるな」
「え? これって……入院準備ですか?」
「そうだ。明日、松岡と田中が取りに来てくれる」
伊武は鼻歌交じりにトランクのふたを閉め、次のケースを重ねていく。その姿を横目で見ながら惣太は溜息をついた。
伊武は明日から数日間、骨折治療で使用した髄内釘の抜釘手術のため柏洋大学医学部付属病院に入院する予定だ。もちろんそのオペを執刀するのは担当医の惣太だが、伊武は二度目の入院生活が楽しみで仕方がないようだ。
「やっぱり、やめましょうか?」
「ん? なんでだ」
「……いえ」
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