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昨今では日本も海外に倣って骨折手術で入れた金属を体内に留置したままにするケースが多く、特に高齢者では抜去しないことがほとんどだ。髄内釘で使うチタンは人体と親和性が高いため、他の金属に比べてリスクも少なく、そのままにしていても問題ない。当然、抜去しないという選択肢もあるのだ。
「また白衣を着ている先生を毎日見られるのか。ああ、幸せだな」
「…………」
伊武は自分の年齢とこれからの生活を考えて抜釘を選択した。けれど一番の理由は、働いている惣太に会えるチャンスを逃したくない、ということだろう。伊武はこの所、いつ入院できるのかとワクワクしながらスケジュール調整をしていた。その上、抜釘したチタンを加工してお揃いの指輪にしたいという。二人が出会った貴重な〝証〟だからと。
発想が斜め上すぎてついていけない。
体内から取り出した金属をマリッジリングにするなんて初めて聞いた。
――本当にやるつもりだろうか?
伊武ならやりかねないと思っていると、不意に後ろから体を抱き締められた。
「オペしたらしばらくできないよな?」
「…………」
質問の意味は分かっている。けれど、答えるのが恥ずかしくて惣太は下を向いた。
「ん? 耳の後ろが真っ赤だぞ」
「いじめないで下さい」
「いじめてない。可愛がっているだけだ」
バックハグは表情が見えない分、相手の体温や匂いを強く感じてしまう。
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