【1】穏やかな始まり

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 伊武の呼吸音や心拍の高鳴りを察知して、同じように自分の体が熱くなった。そんな惣太を愛おしいと言うかのように、背後からほっぺたにすりすりされる。 「先生のほっぺは相変わらず柔らかいな。出来立てのすあまみたいだ」  伊武の頬はなめした革のような感触で心地いい。夕方になるとわずかに生えてくる髭の気配も好きだった。頬をくっつけているだけなのに幸せな気持ちになる。 「今日はどうしようか」 「……どうって」 「答えられないか?」  質問のようで質問ではない。伊武が楽しんでいるのが分かる。 「誰も見たことのない、俺だけが知っている顔を見たい」 「そんなのないですし……電気はちゃんと消します」 「どうしてだ?」  暗いと怖いだろう? と変な誘導をしてくる。  背後から腕を伸ばした伊武が、惣太のシャツのボタンに手を掛けてくる。よく見えないはずなのに凄く器用だ。甘い声で囁きながら次々とボタンを外していく。 「先生の体は綺麗だ。真っ白でさらさらで、どこも小さくて可愛い。全部、愛おしくてたまらない。ああ、ここを触ったら尖ってピンク色になるかな」  開いたシャツの隙間から手を滑り込まされる。すぐに乳首を見つけられて摘ままれた。指先で潰すように愛撫される。 「あっ……」  それだけで熱を持った乳首が甘く痺れて、快感がじわりと滲み出る。扱かれるたびに放射状の快楽が全身へ広がっていく。
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