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伊武のことが好きすぎて周りがよく見えていない。こんなに好きで、顔を合わせているだけでドキドキするのに、二十四時間一緒にいたら自分はどうなってしまうんだろうと思う。好きという気持ちを抱えているだけで精一杯の状況なのだ。
突然、『激務の整形外科医 急死!』の文字が頭に浮かんだ。違う。原因は過労の急死ではなくただのキュン死だ。
――ああ、もう……。
一緒に暮らすとは己の全てを見せることだ。
自分は完璧な人間ではない。
休日は何もしないでカワウソのように両手を挙げ、裏向いて寝ている。当直明けの寝顔は多分、白目で相当なブサイクだ。
嫌われたりしないだろうかと心配になる。
家族にもまだ伊武との交際については話していない。特に自分のことを溺愛している真面目な兄にそれを告げるのが憂鬱だ。
惣太はもうしばらくの間、普通の恋人として過ごすことを望んでいた。
「惣太さん?」
「ああ。一緒にはいたいけど……嫌われたりしないか心配なんだ。ずっと一緒にいると誰だって欠点が見えてくるだろ? それが怖いんだ。伊武さんはああ見えてちゃんとした大人だし」
「え? 惣太さん、そんなこと心配してるんですか?」
「おかしいかな?」
「おかしいっていうか、ありえないんすけど。カシラが惣太さんのことを嫌うとか」
「……うーん。どうだろう」
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