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「ヒソカさんならそう言うと思ってました。会ってすぐ私と同類だと解りましたから。ヒソカさんは、一個人として住む場所、私は家や猫の世話を管理してくれる人と、家賃が必要です。愛情に基づいて結婚したいと言わない人だと思っていました」 ヨギさんは口角だけ上がる例の笑いかたをした。私も口許が緩んだ。なんだか楽しくなってきたから。休筆計画の進捗報告がてら美春さんにも話そう。何て言うかな?楽しみだなあ。 「ただ…母と父にも一枚噛んでもらって良いですか?二人とも私の変人ぶりには理解があるんです。本当のことを隠すほうが二人とも怒ります」 「理解あるご家族でうらやましい。私の実家には隠したほうが良さそうです。両親とも保守的な人間ですから。それにヒソカさんと結婚したら母からお見合いを無理やり勧められなくなって、かなり気持ちが楽になります」 「そうだ、暫く婚約期間と言う名目のお試し期間をつくってもらっていいですか?お隣の国とはいえ、外国に住むのは初めてだし、私たちの一対一での相性も未知数ですから」 「はい、勿論」 私はヨギさんと結婚するのは名案だと思った。対外的に誰にも突っ込まれないし、詮索もされないだろう。それに韓国人と結婚したら韓国に行くのも自然だ。いちいち説明する手間が省ける。 ヨギさん気前がいい。合法的に夫として後ろ楯になってくれるんだ。 それに、これで、私の願いも叶う。 ヨギさんのいい匂いが充満した空間で、伸び伸び過ごせる。 とても名案だと、思った。 自分の事しか考えていなかった。 自分が自由に、幸せになることしか。 多分ヨギさんも、似たようなものだったんだと思う、あの時点では。 家のローンが切実だったようだから。 結婚を舐めていた。 「お父さんお母さん、私結婚することにした」 私が言うと、父と母は顔を見合わせて苦笑いをした。驚かれなかったし、誰と?と聞かなかった。すぐヨギさんに父が目をやった。ええ? 「うちの娘でいいのかい?」 ヨギさんは目付きだけ驚いたようになりながら、淡々と答えた。 「はい」 私は母に聞いた。 「何で?相手がヨギさんだって、お父さんもお母さんも知ってるの??そんなにバレバレだった?」 「ヒソカが何かたくらんでるみたいだったから、ろくでもないことだろうって、お父さんと話してたわ。ヨギさんも一枚噛んでるみたいだね、って。何年貴方の親やってると思ってるの。何でまた結婚?韓国で暫く暮らすのに結婚必要?お父さんと私は何をすればいいの?」 「私の両親と何も知らないふりをして顔合わせをしていただけますか?」 ヨギさんかほっとした目付きで、父に言った。 「それと、適宣話を合わせていただければ」 「それだけていいのかい?」 「はい、韓国に行ってしまえばご迷惑はお掛けしません」 「つまり、向こうではこの子の安全は責任持ってくれるんだね?」 お、父が真剣な顔になっている。いやいや、ここで花嫁の父ごっこしないでほしいのだけれど。 「オさん、うちはご存じの通り我が子を一人亡くしている。ヒソカまで失う位なら家に閉じ込めていようかと考えもした。今思えば私たちが娘にしてやれることはたかが知れているけれどね」 「…お嬢さんの幸せのため、私が保証できるのは、韓国で安全な住む場所を提供することくらいです、すみません」 「この子は案外たくましいから、それだけ保証してもらえれば大丈夫よ。それよりなんだって結婚まで?」 「結婚と言う契約さえ済ませれば、かなり割りの良い韓国の市民権が得られます」 母がクスッと笑った。 「結婚て単なる契約じゃないわよ?同じ家に住むなら」 私もクスリと笑った。ヨギさんと暮らしてたぶんそんな風にはならないはず。ヨギさんの顔を見ると、母の言っていることがよくわからないという表情だ。 私たちの様子を見て、母は父とまた顔を見合わせて苦笑した。 「まあ、やってみなさい」 父がしょうがないな、と言う風に、肩をすくめた。
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