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はじめてオ・ヨギさんと会ったのは、私が実家まで逃げてきた時だった。
私を口説き落とせば原稿を優先的に貰えると腹積もりした頭のおかしい男に、自宅まで押し掛けられた日、怖くなって一人で自宅にいたくなかった。
その男が独断で数年前書いて再版リニューアルした私の本の表紙のプロフィールに、私の素顔写真を載せ、「美人すぎる小説家」として頼みもしないないのに、日本では名の知れた存在となって煩わしい有名税を払うはめになり、ホトホト日本に居るのが嫌になっていた。
その男のせいで、書いていてもモヤモヤがたまって、今までのように書くのが楽しくなくなった。18歳の時にデビューしてから9年間突っ走るようにして書いた。だけど生活がそれが全てになって、とても疲れてきた。休みたい、日本にいたくない。小説家でもなんでもない、家族と同じ名字を持つ、倉橋 ヒソカという一個人でいたい。
それで、まずは勝手知ったる実家に逃げ込もうとしたら、父の仕事関係で、一週間泊まる予定の韓国人男性が来るから、と部屋を片付ける母の手伝いをした。
その韓国の人は、12年前バイク事故で亡き人となった兄の部屋に泊めると母が言った。
私は母の中でも兄はきちんと亡き人となったのか、良かったな、と思った。
兄が亡くなったときは、悲しくてしょうがなかった。年の離れていたせいか、兄は私とは喧嘩もせず仲が良く、兄が大好きだったから。でも私が亡くしたのは兄で、両親には赤ん坊から育てた息子だ。母は元気を取り戻すのに随分かかった。
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