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一日目。
父と一緒にヨギさんが玄関に立って、ヨギさんが流暢な日本語でお邪魔します、と家に入って来た。背が高いなと思った。
日本語お上手ですね、と声をかけたら、私の方を見て
「大学で学びましたから」
と返事をした。
学生が授業で学ぶレベルを越えてます、ヨギさん。だいたい貴方が大学生だった頃って何年前デスカ。
返事をしたあとも、何かを思い出すように私を見つめている。私が首をかしげると分かりやすく目をそらして家のなかを見回した。
「綺麗に住まわれていますね、掃除も行き届いています」
母は少しだけ引き攣った顔になりながら、ヨギさんを兄が使っていた部屋へ案内した。
あとで、晩御飯を用意しながら、母はムスッと私に囁いた
「なにあの男、泊めて貰うのに上から目線ね、人の家のこと掃除が行き届いてます、ですって。余計なお世話じゃー!」
私はヨギさんの後をフラフラとついていった。自分に面食らいながら。わあ、なんていい匂いがするんだろうこの人と嬉しくなりながら。もはや変態だけど、夢中になっていたので許してやってほしい。
母と私は、韓流ドラマにのめり込んだ末、ハングルを勉強して日常会話程度なら話せる。それもあって、父の会社の上の人から、ヨギさんを預けられたのだそうだ。ITエンジニア/デザイナー、それがヨギさんの肩書きで、父の会社に新しいセキュリティソフトやシステムを説明しに来ているそうだ。
頭は良さそうだけれど、情緒の冷たいガチガチの理系だ。本当に「あの匂い」がなければただのお客としてたぶんこんなに気にならないと思った。
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