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真夜中、私とヨギさんは家をそっと出て、なんとなく後ろめたい気分でコンビニまで出掛けた。ヨギさんはキョロキョロと辺りを見回しながら。韓国の家並みとは様子が大分違うんだそうだ。 『日本語で話してください』 暫く歩いて、ポソッと言われた。合わせなくていいですよと。 「橋渡(はしわたり)さんは外国人と話しなれていますね。よく話すのですか?」 「ええ、父が仕事の関係で良く家につれてくるので、話し馴れているかも…え?」 あれ?私この人に名乗ったっけ?顔に出たんだろう、フッと口許だけ口角が上がる笑いかたで笑って、ヨギさんは前を向いた。 「日本語を忘れないために、時々日本語の本を読みました。あなたの作品も。若いのに達観していると思いました、橋渡 密(はしわたり ひそか)さん。」 「やだ、知ってたんですか。経験もないのに生意気なだけですよ」 「言葉の選択がいいと思いました」 「ありがとうございます」 『それに本当に美人です』 ボソボソ早口で言ったのでよく聞こえなかったがヨギさんがハングルで何か言ったのだけは分かった。
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