ビンタ

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「あいつ、前の学校でヤバかったらしい」  オリが言った。帰り道だった。田んぼではカエルが鳴き始めていた。 「ヤバいって、なんだよ」カズがたずねた。 「何人もケガさせてるって、お母ちゃんが言ってた」 「どうやって」俺。 「わかんねえよ。でも、耳聞こえなくなったやつもいるって」 「ヤバいじゃん」カズがつばを飲んだ。 「なんでクビになんねえんだ」 「しらねえよ」 「まだ、誰もやられてないよな」 「まだな。でも何人か目をつけられてる」 「なんでそんなこと知ってんだ」 「お前もだぞ、イサ」 「ヤベえじゃん」カズが言った。声がうわずっていた。  セキヤがときどき俺の方を見てるのは知っていた。親父と同じ、人を殴るやつの目。ちくしょうだ。
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