9 実力行使と狼男

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下僕(げぼく)、非常食よ」 「飲む気がしないので、いいですよ」 「いつ(のど)(かわ)くか分からないし、いきなりなみかを()べられないでしょうに」 「お聞きしたいのですが、この血の入手先、医者ですか?」  私の心配をよそに、話題を変えた。 「そうよ」  (そっ)()なく答える。  前々から、妙に入手先を気にしているわね。 「出来れば、会わないで頂きたいのですが」 「何故?」 「これを入手するのに、貴女(あなた)が身を犠牲(ぎせい)にしていると思ったら()たたまれないからです。朝帰りの理由はそれでは?」  朝帰りの理由? 私が身を犠牲(ぎせい)にってどういう……?! 「身売(みう)りなんてしてないわよ!!」 「その証拠(しょうこ)は?」 「証拠って……」  そんなもの、あるわけない。  いいえ……。  あるにはあるけど、下僕(げぼく)には言いたくない。 「とにかく、なみかが大変なんでしょ。行くわよ」  さっさと部屋を出て、キッチンへと向かう。  そう言えば、神父は結婚式をしたカップルの初めての夜に立ち会う仕事があったわね。  神の前で(ちか)った言葉が、肉体によっても成立したことを確認する為だと聞いたことがある。  下僕(げぼく)も、戦闘部隊所属とはいえ一応神父。頓珍漢(とんちんかん)口説(くど)き方をしてくるのは、もしかしてそんな現場ばかり見て来たから……?  早々に、ネグリジェを襟元(えりもと)()まったものに変更した方が良さそうね。
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