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中に入ると、広いリビングには2人掛けサイズのソファーと小ぶりなテレビ、テレビに繋がっているDVDレコーダーしか置かれていなかった。しかもテレビは床置きである。
そこかしこに口の開いていない段ボールがいくつか重なっていた。
ごちゃごちゃしているというか、まだ生活感がない、という感じだ。
「先シャワー使って下さい。着替え、俺ので良ければ貸すので」
「ああ……」
身の置き所がなく立ち尽くしていると、ナカノが段ボールに貼られたガムテープをびりびりと剥いで、中からスウェットの上下を出して手渡される。
「下着も、嫌じゃなければ貸しましょうか?」
「いや、それは、大丈夫」
さすがに下着まで借りるのは、なんだか気恥ずかしくて首を横に振る。
「じゃあ、タオルとか用意しとくんでどうぞ」
自分より年下なはずなのに、よく気が利くな、と純粋に感心する。
「どーも」
それなのに愛想もなくお礼を返すことしか出来ない。
「そういえばこの部屋の風呂広くてびっくりしました」
笑いながら言うナカノに見送られ、浴室に入った。
なんというか、初めてできた彼女の家に初めて入ったような、胸がくすぐったい感覚がする。
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