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シャワーを浴びてスウェットに腕を通すと、指先がぎりぎり出るほどの大きさだった。体格の違いに、余計に胸がくすぐったくなった。
なんだこの感覚。
――惚れちゃったってわけ?
伊月の言葉がリピートする。そう言われても仕方が無いような、この感覚を取り払いたくて、タオルでわしゃわしゃと雑に髪を拭いた。
リビングに戻ると、ナカノがソファーに座ってテレビを見ている。
帆多留が戻ってきたことに気付いたらしいナカノは、
「ねえ、市瀬さん出てる」
と、なんとも嬉しそうに言っては手招きする。その人懐こい笑顔に心が弾んだことには気付かないフリをして、ナカノの隣に腰掛けた。
狭いソファーのせいで、膝と膝がかすかに当たる。
テレビ画面を見ると先程出演したばかりの音楽番組が流れていた。
「録画?」
「トレンド知るために、この音楽番組、毎週欠かさず録ってるんすよ」
アイドルしている自分を、隣で見られているのは正直恥ずかしい。
「すごいなあ、市瀬さんがテレビにも隣にもいる」
羞恥を感じている人の気も知らず、楽しそうに言うナカノ。
「……なあ、俺が、こう、テレビと素でキャラ全然違うの、何とも思わねーの?」
帆多留は気になっていたことを問い掛ける。
「んー? たしかにちょっと、違いますよね、市瀬さん」
ちょっと、どころか全然違うと思うんだけど。
こんな需要のないギャップ、引かれていてもおかしくないよな。そう考えると虚しくなってくる。
けれどナカノの続ける言葉に、帆多留は驚かされた。
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