191人が本棚に入れています
本棚に追加
0.02ミリの壁すら、もどかしいと思った。本心を伝えることに慣れていないせいか恥ずかしさが赤面となってあらわれるがヤケになって視線を合わせながら、夕希の腰に回した腕を引き寄せつつ眉を顰めて伝える。
「要らねえからそのまんま、欲しい」
何度も与えられた快楽のせいで瞳に溜まったままの涙が視界を歪ませる。はっきりとしない視界の中でも夕希が息を呑んだ後に笑みを溢したのが見えた。
「かわいい」
笑顔を眺める暇もなく耳元まで落とされた唇から普段より熱が籠った声が発せられ、全身に震えすら覚える。羞恥を逃したくて夕希の肩口へと額を押し付ける。
名残惜しくも離れていった肩。夕希が上半身を起こして帆多留の腰を抑え、何にも覆われていない自身の先を入口に這わせる。
それだけで今まで以上に頭がおかしくなりそうだった。いつもより熱く感じるそれが、すっかり慣れてしまった孔を進む。
「はぁ…あ、…あつ…」
「帆多留さん、いつもよりきゅうってなってんの、分かります?」
「わかんねえ…よ…っあ…!」
羞恥を煽る問い掛けをあしらっていると奥まで一気に硬く熱い熱が押し上げられ、思わず声を出して夕希の両腕を掴んでしまう。
掠れながらもなお止まらない嬌声を発しながら、腰を振る恋人に掴まることで精一杯だった。
「あっあぁ……ゆーき、…ゆうき…」
「帆多留さんっ……好き、大好き…すげー可愛いカオしてる…」
帆多留が痛いほどに腕を掴んでしまうことも気にせずに夕希が腰を動かすことで互いにぐちゃぐちゃになった欲を溶かしていく。
出会った時から、この男に力と体格の差を感じていた。懐の深さの差も、頼もしさの差も。自分が何もかもちっぽけな気がして、そんな卑屈な感情すら包み込んでくれる逞しい腕の中で愛されている事実が幸福で。快楽からでは無い涙が溢れ出てくる。
いつもなら恥ずかしさで逸らしてしまう顔も、今は一心に夕希を見つめて、自分と同じように熱に浸される表情を脳裏に刻み込む。
普段の爽やかな雰囲気と一変して色気のある顔の夕希に見惚れていると表情に一層の苦しさが見えて、腰が引かれそうになる。出そうなのか。瞬時に察して咄嗟に両脚を腰に絡めて己の腰に引き寄せる。
「いーよ…このまんまナカ、出せよ…」
「…っ!…待っ、それはさすがに…」
「…愛してるよ…夕希…」
動揺からか腰の動きが止まった隙に、殆ど出せなくなった声で静かに呟いて最後の気力を振り絞って帆多留から腰を上げて悦を求める。
驚きの表情と欲を求める表情の入り混じった夕希の眉間の皺が一層深くなり一瞬呼吸が止まる気配がした。
「帆多留さ……っーー!」
「ンッ…は、あ…ッ……イく……!」
直後、ナカで脈を打たれ温かいものが注がれていくことが分かる。同時に何度目か分からない果ての感覚を覚えた帆多留はそのまま意識を手放した。
最初のコメントを投稿しよう!