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「テレビだとやっぱ、完璧な王子って感じでかっこいいっすけど、今の市瀬さんは、なんか可愛いっす」
「……可愛い?」
聞き間違いか? 可愛い? つった? 俺が? 可愛い? カメラの前ではビジネス天然作ったりしてるけど、今の俺が?
「可愛いっすよ。意外と抜けてる感じがします。鍵無くしたりとか」
「……あー、鍵、なくしたんだよな俺」
思い出して、また心がどんよりと曇る。
「出てくると良いっすね」
よしよし、というふうにタオルを被った頭をひと撫でされ、どき、と胸が高鳴ってしまう。
何も返せずにいるとナカノは気にせず言葉を続ける。
「あとテレビで見るより思ったより小さいし」
「小さい、はやめろ。これでもちゃんと170は越えてるからな」
「はは、すみません。あと細いっすよね。ちゃんと飯食ってます?」
そう聞かれつつ何の躊躇いもなく、手首を握られた。
「ほら、俺の指全部届く」
新しいおもちゃでも見つけた子供のように、手首に巻いた指で輪を作りながら無邪気にナカノが言う。
頬に熱が集まってくる感覚に、思わず手を引っ込めた。
「俺は……メンバーの中で1番、ダンスが下手だから。せめて少しでも線が綺麗に見えたらって思って、食事とか気を付けてて……」
「そうなんすか? 素人が見たら、みんな上手に見えますけどね」
どき、どき、が止まらなくて。胸が高鳴っている帆多留に反して、何事も無かったのようにナカノはまたテレビの中の帆多留に視線を戻す。
「あっ、でも歌は市瀬さんが1番上手いの分かりますよ。高音がすげー綺麗」
「ああ、歌には自信ある」
ナカノに褒められたことが単純に嬉しくて、帆多留はそう言ってはにかんだ。
絶え間なく笑顔を見せていたはずのナカノが、驚いたように目を見張った。
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