episode2

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夢でも見てるのか。やめてくれ。むかつく。むかつく。むかつく。  居た堪れなくてナカノの腕を勢いよく解いて身体を起こす。  振り返ると、薄く目を開いたナカノと目が合う。 「おはよ……っす」  寝惚けたように目を擦りながら、ゆるゆると身体を起こすナカノに、むしょうに腹が立って無視をしてベッドから降りる。  トートバッグから煙草とライターを取り出し、部屋主の許可も取らずベランダに出て、煙草に火をつけた。  その場にしゃがみ込んで、気持ちを落ち着かせるように煙を深く吸う。  がらがらと、ベランダの掃き出し窓が開いた。ナカノが中からこちらに顔を出す。 「市瀬さん、なんか怒ってます?」 「別に」  勝手に煙草を吸い、理不尽に冷たい態度を取っているのに、ナカノは何も気にしていないふうに「じゃあ寝起き悪いんすか?」と、大きなあくびをしながら微笑む。  ――彼女と間違えて抱き着いたあげく俺に向かって彼女の名前を呼んだくせに、呑気だな。  むかむかは消えてくれない。煙草を吸いつつ睨むけれど、気付いていないのかナカノは何かを思い出したように「あっ」と声を出す。 「市瀬さんやっぱ見た目通り軽いっすね」 「はあ?」 「ソファーからベッド運んだのに全然起きないし、よっぽど疲れてたんすね」 「……まじかよ」  だからいつの間にかベッドに居たのか。 「ソファーだと身体休まらないかと思って……。正直彼女より軽々持てました」  内緒ですよ。と悪戯っぽく笑うナカノに、頭の中で何かがプツンと切れた。  
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