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さっそく2人で荷解きに取り掛かった。ダンボールの口を閉じているガムテープをひたすらカッターで切っていく。
「それはキッチンの戸棚に」
「それはこっちに下さい」
などと、夕希に指示をされれば大人しくそれに従った。
「ちょっと前まで高校生だったのに、もう懐かしいな」
夕希が作業を中断して高校の卒業アルバムを見始めたので、「終わってからにしろ」と背中をひとつ小突いてやった。
「はーい。ごめんなさい」
夕希が悪びれなく謝って、屈託なく笑う。帆多留もつられて微笑んだ。
こんな穏やかな時間がひどく幸せで、これから2人暮らしをするための片付けでもしているような、錯覚を起こす。
一通りダンボールを開ききったところでひときわ大きなダンボールが目に留まる。
「これも――」
「あっ!それはいいっす――!」
帆多留が、これも開けていいのかと聞こうとすると夕希が焦ったように制止する。突然の大きな声に、帆多留はびくっと肩を震わせた。
夕希が、今までの穏やかな雰囲気と打って変わって、深刻そうな声色と表情に変わる。
「あ……すみません。えっと、ワレモノとか、重たい物とか入ってるんで。あとで俺がやります」
決まり悪そうに夕希が言って、なんだか微妙な空気が流れる。
一体何が入ってるんだ? 彼女との思い出の品とか? めちゃくちゃに高価なものとかか?
気になるけれど、さすがに聞ける雰囲気ではなかった。
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