episode3

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 その女の登場で、部屋が静まりかえる。 「結衣? 急にどうしたの?」  彼女だろうか。とは、薄々気付いていたけれど、夕希の一言で確信に変わった。  夕希もこの状況を呑み込めていないようで、目をぱちくりさせている。  パフスリーブの白いブラウスに、ベージュのテーパードスカートといういかにも女性らしい服をまとった彼女は、緩く巻かれた長い茶髪をゆらして話す。 「サプライズだよ。今日から3日間お休み取れたから」 「昨日の電話で言ってくれれば良かったのに」  困ったように言う夕希に、彼女は「そしたらサプライズにならないでしょ」と返す。  そして、帆多留の方に視線を向けた彼女が、目を見開いた。驚いた表情の彼女と目が合う。 「え!? SEASONの帆多留くん!? どういうこと? 夕希、友達なの!?」  彼女が夕希と帆多留を交互に見た。  どう弁解しようか焦りつつ、咲久との電話が繋がりっぱなしだったことに気付いて慌てて耳にスマホを付ける。 「後で折り返す」  小声で短く伝えると、咲久の返事を聞く前に電話を切った。  こんなにばっちり顔を見られてしまって、誤魔化しようがない。  正直に隣に住んでると言うしかないか。  帆多留は諦めて、テレビ用の笑顔を浮かべた。 「そうなんです、実は――」 「そうそう、俺もびっくりしてさ! 本当に瓜二つだよね、帆多留くんと」  口を開くと、夕希が割り込んできた。
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