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episode4
「帆多留最近どうしたん」
今日はお昼の生放送情報番組に、伊月と2人で呼ばれている。この間収録したバラエティー特番の番宣だ。
楽屋で待機中、会話もなく2人でスマホをいじっていたけれど、しばらくして伊月がスマホ画面を見たまま話しかけてくる。
「どうしたって何が」
「最近元気ねえじゃん」
夕希の部屋に突然彼女が来た事件から1週間が経つ。
仕事上生活リズムが崩れている俺と大学生の夕希では、あの日以来エントランスや部屋の前でばったりと会うことも無い。
これでいい。顔を見てしまったら、消そう消そうとしているこの想いがまた、膨れ上がってしまいそうだ。
「別に、なんもねーよ」
スマホから目を離し、顔を上げて言う。
一緒に顔を上げた伊月と目が合った。ほんとかよ、とでも言いたそうに眉間に皺を寄せる伊月に「まじで何も。ただちょい疲れてるだけ」と念を押す。
「まあ、ならいいけど……なあ、咲久の誕生日近いじゃん? 週末みんなで祝えたらなーって考えてたんだけど」
予定ある? と聞かれて首を横に振る。
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