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期待と緊張を覚えながら、玄関モニターを見ると、夕希の姿が映っていた。モニター越しで目が合う。
もう会うべきでは無いと思っていたのに。顔を見てしまうと、また話したいと、心が揺らぐ。
でも――。
居留守をしようと、夕希が玄関から離れていくのを待った。
早く、立ち去ってくれ。もう、関わらないでくれ……。
少し寂しげに目を伏せて、モニターから顔を背けた夕希が背を向ける。
その目に、針で胸をちくちく刺されるような心地がした。
背中が見えなくなるのを見送り終わる前に、モニターがオフになり画面が真っ暗になる。
いたたまれず、足が動く。
足早に玄関に向かい、扉を開けた。
がちゃん、という音に、背を向けていた夕希がこちらを振り返る。
夕陽を背景に、逆光になって目にうつる夕希は少し驚いたように目を見開いてから、すぐに口元に笑みを浮べた。
「こんばんは」
思わず玄関を開けてしまったもののどうしていいか分からず、帆多留は目を逸らして「どーも」と素っ気なく返す。
「卵安かったから買い過ぎちゃって、オムライス作るので良かったら一緒に食べませんか?」
にこにこと笑いながら夕希が言う。
あーやっぱりその笑顔、癒される……。
夕暮れの眩しさに目を細めて、ぼんやりそう思いながら、自然に頷いていた。
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