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途端に頬に熱が集まる感覚がした。
赤くなっているであろう顔を、見られたくなくて、視線をそらして欲しくて。
「お前そういうの、簡単に言うなよ」
もごもごとそう言いながら、ケチャップを手に取って何も描かれていない方のオムライスへと自分も絵を描く。
だいたい元気ないのは、お前のせいなんだからな。
「へー、帆多留さん絵上手いっすね。ワニだ」
完成した絵を見て夕希が言う。
いや、ワニじゃなくて……。
「……猫なんだけど」
「え、よく俺の絵見て笑えましたね」
「猫だろどう見ても」
「ワニでしょ」
肩を揺らして笑い出す夕希の腕を小突いてから、手を合わせてスプーンを手に取る。
「食べ終わったら絵しりとりしましょーよ、絶対俺の方が上手いから」
「はあ? 絶対俺の方が上手い」
「いや俺っすね」
猫の絵のオムライスを夕希が、犬の絵のオムライスを帆多留が、食べ進めていく。
見た目通り、ふわふわとした食感のそれは美味しくて、空腹を満たしてくれた。
普通の友達だったら、純粋にこの時間を楽しめるのに。
厄介な恋心を抱えているせいで、こうして笑い合っていることが、少し切なくなってしまう。
この笑顔を自分だけのものに出来たら、どんなに幸せだろう……。
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