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「あはは、帆多留さんのパンダ傑作」
笑いながらスマホで写真を撮る夕希を帆多留は横目で睨む。
「言っとくけどお前のラッパも大概だから」
夕希の大学の書類裏に、2人でたくさんの絵を描きこんだ。
絵しりとりはお互いの絵を笑い合いながらも奇跡的に繋がっていた。
それすらもなんだか可笑しくて、楽しい。
いつの間にか、外はすっかり暗くなっていた。テーブルの上には、空っぽになった皿と、マグカップが2つ置かれている。
マグカップの中身は夕希が出してくれたドリップコーヒーである。
「ラッパってもっとこう……」
酷すぎるラッパの絵に、自分も描いてやろうと、指で回していたペンを掴もうとした。しかし床にペンを落としてしまう。
からん、と乾いた音がする。
身体を屈めて床に手を伸ばすけれど、どうやらソファーの下に潜り込んでしまったらしい。
「あ、下入ったかも」
視界をさえぎる髪を耳に掛けて、床をよく見ようとする。
「……いいっすよ、俺拾いますから」
「んー……わりぃ」
夕希にそう言われ、身体を起こす。と、唐突に肩を抱かれた。その力の強さに驚いてびく、と体が震える。
「ゆー、き……?」
一瞬、今までに見た事のない、情欲を秘めた視線と目が合ってどくんと大きな心の波が立つ。
動けずにいると、そのまま顎を抑えられて唇に唇が重なった。
――は?
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