episode4

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  「っつ……!」  瞬間、唇と身体が解放される。  痛そうに口元を抑えて目を伏せている夕希が視界に入る。震える足で、何とかソファーから立ち上がった。 「……お前、何……何してんだよ! 彼女、……彼女が悲しむだろ!」  疑問と動揺と興奮と、怒りに似た何かと、焦りと、様々な感情が入り交じって、荒くなった呼吸と共に声を上げる。 「……彼女とは、別れたんです……」 「え……」  嘘だろ、あんなに、仲良さそうだったのに。 「でも……ごめんなさい。だからって、こんなことしていい理由にならないのに」  自分でも驚いているような、震えの交じった声で夕希が静かに言葉を紡ぐ。 「……綺麗だなって、帆多留さんの横顔が。そう思ったらつい」  今にも泣き出しそうになる夕希。まだ動悸の治まらない心臓。 「なん、だよ、それ……」  どう言葉を掛けていいか分からずに、こちらも泣きそうになりながらそれだけ言って、静かに部屋を出る。  追い掛けて来ない夕希に、ほっとしたような、悲しいような、複雑な気分のまま、自分の部屋に帰った。 耐え切れずに、玄関でしゃがみ込む。 口の中には、苦いコーヒーの味と、キスの、熱い感触が残っている。    
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