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「つまり急にキスされてチキって逃げてきたん?」
氷だけになった空のグラスを回しながら、伊月がけらけら笑う。
「そんな言い方すんなよ……」
帆多留は雲の上を歩いているようなふわふわとした意識の中で、弱々しく伊月に反論する。
「そうだよ伊月。帆多留も吃驚したんだよね」
フォローしてくれているらしいが、語尾にかっこ笑いがついたような言い方で咲久が言う。
冬音は何も言わず、けれど肩を揺らして笑っている。
「馬鹿にすんなって……まじで。ビビんだろ、男に急にキスされたら」
ほろ酔いの一歩上くらいの酔いの感覚に、帆多留は脱力感を覚えていた。
咲久の誕生日祝いと称して、伊月が急きょ計画してくれたメンバーとの宅飲みの会場は帆多留の部屋に決まった。
一応パーティーっぽくするため、缶ではなく、上品にグラスを使って酒を酌み交わしている。
「25の男がキスされたくらいでそんな童貞みたいな反応するかフツー」
そう言う伊月に、いよいよ反論する気力もなくなって溜め息をついた。
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