190人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと、時計を見ると8時を回ったところだった。飲み始めてから2時間は経っている。
最近の帆多留の様子がおかしいことに気付いていたメンバーが、何があったのか問いただした結果、アルコールのおかげか帆多留は夕希とあったことを全て話してしまった。
「向こうがフリーになったなら付き合っちゃえばいいのに」
咲久があっさりとそう言う。いやいやそんな簡単な話しじゃねーだろ。
「無理だろ……」
「好きなんでしょ、夕希くんのこと」
咲久の大きな目が、帆多留の目を捕らえる。この目で見つめられると、嘘や誤魔化しが思い付かない。アルコールのせいで、尚更頭は回ってくれなかった。
ヤケになってグラスに3分の1程残ったハイボールを、ぐい、と飲み干す。
「好き、だけど……」
途端にくらくらする視界の中、素直にそう言ってしまうと、自分を押さえ込んでいた何かから解放された気がした。
「今も会いたいでしょ」
「会いたい……」
「またキスしたいでしょ」
「したい……」
咲久の尋問に、帆多留は素直に答えていく。
正直、夕希とのキスの感覚はまだ忘れられていない。けれど、あの夜のことは夢だったのかと思うくらい、記憶が遠ざかっていた。
夕希と会わなくなり、3日が経つ。
最初のコメントを投稿しよう!