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自分からまた夕希の部屋に出向くのはなんだかプライドが許さなかったし(クソみたいなプライドだ)、夕希がまた帆多留の部屋のインターホンを鳴らすことも無かった。
今度こそもう、二度と会えないのだと思うと、あの時逃げ帰ってしまったことを後悔するしか無かった。
「夕希はやっぱり飲むと素直になるな」
そう言う冬音はいつもより笑い上戸になるよな。
「ふふ、王子様可愛い」
咲久がそう言いながら、咲久以外のメンバーでこっそり用意したバースデーケーキにフォークを差した時だった。
――ピンポーン。
部屋に、インターホンが鳴り響く。
「うわ、まさか噂をすればってやつじゃね?」
部屋主の帆多留が立つより先に、伊月が玄関モニターを確認しにいく。
咲久と冬音も、追い掛けてモニターをチェックしに行った。
「帆多留ー、夕希くんってこの子?」
咲久が声を上げて帆多留を呼んだ。帆多留もふらふらとそちらに向かい、楽しげにモニターに群がる3人の後ろから、画面を覗き込む。
「……夕希だ」
素面なら、ここで、玄関を開けるか開けまいかまた考え込んでいただろうけど。
酒の力は怖い。すっかり出来上がった帆多留は躊躇なく玄関に向かい、扉を開けた。
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