episode4

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   とっさに駆け寄ってきた夕希に、抱き止められた。 「ほら、無理しないで下さい」  途端に近くなった顔と顔の距離に、昨日抱き着いてしまったことと、口付けを思い出してしまって、盛大に心臓が跳ねる。 「わり……」  顔を背けて夕希から離れ、大人しくもう一度ベッドに腰掛ける。  そこまで二日酔いが辛いわけではなかったけれど、誤魔化すように頭痛のフリして額をおさえる。 「飲み過ぎですよー」 そう言われつつ頭をひと撫でされて、また心臓が跳ねた。そのまま顔が上げられなくなってしまう。 「お前さー、距離近いとか言われね?」 「あ、すみません……男にこんな、触られても嫌ですよね」 離れた手と、顔を見なくても落ち込んでいると分かる声色に、しまったと思う。 ――嬉しいくせに。素直に言えない。 少しの沈黙のあと、夕希が言う。 「あの……キッチン借りていいっすか?」 「キッチン? 別にいーけど……」 「二日酔いには味噌汁が効くって聞いたので、作りますね」 「いや、俺の冷蔵庫そんな、食材揃ってねーよ」 「俺の部屋から、持ってくるんで! ちゃんと寝てて下さいね」  笑顔でそう言う夕希が、ぱたぱたと部屋を出ていく音がする。  なんか、飯作ってもらってばっかだな……。  醜態を晒してしまったけれど、仲直り? 出来て良かったと思いながら、もう一度ベッドに潜って目を瞑った。 彼女と別れたなら、変に、気を遣うこともしなくていい。ふと、それを実感する。 自分のものにならなくたって、夕希は今、誰のものでもないのだ。 あの時は急に、キスされて、冷静に考えられなかったけれど、正直、嬉しい。
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