episode4

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何を、謝っているのだろう。  「この前、急に、無理やり、あんなことしてごめんなさい」  あんなことと、とは、聞かなくてもキスをしたことだとわかる。 もう、別に、いいのに。むしろもう一度、したいくらいで……。 「……まあ、びびったけど」 「そっすよね。酷いことしといてムシがいいけど、あのことは忘れて下さい」  何も返せずにいると、夕希が顔を上げる。  驚くほどに悲しそうな、切なそうな、微笑みを浮かべて。  なんだろう、この感じ。心がざわざわする。  早く何か言わなければと思った。  何か、何か。  また一緒に、飯食べたいとか。  また、会いたいとか。  夕希のことが、好きだとか。 「……忘れて下さい、俺のことも」 「は……?」  そう言われて、頭が真っ白になって、言葉が出てこない。 「もう、迷惑かけないので。……もう、会わないようにするので。本当ごめんなさい」    背中を向けて寝室から出ていく夕希。引き止めないと。  慌てて一気に身体を起こすと、ずきん、と頭が痛む。 「痛っ……」  頭をおさえて、顔を伏せる。玄関のドアが閉まる音がした。 どうして? なんで?  親に置き去りにされた子供のように、心がしおれて、上手く呼吸が出来なくて。今にも涙が溢れそうなくせに、泣くことも出来ない。  そのまましばらく、ベッドの上から動けなかった。  
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