episode5

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「あれ、嘘だから……まじで、付き合ってるとか、ねえから……」 それでも帆多留はどうにか言葉を続ける。 「そうっすか……」 夕希はこちらに足を進めて、けれど帆多留を素通りして玄関の扉を開ける。 「何でそんなの、俺に言うんですか」   あからさまに突き放すような言い方で、怒ったような表情で、そう返されて、帆多留は何も言えなくなる。 ……泣くな、泣くな。と、自分に言い聞かせる。 必死に次の言葉を探していると、夕希がまた冷たく言葉を放った。 「俺もう、引っ越すんです。今日、退去の手続きして来たんで」 「え……?」 「最初から、1ヶ月だけの契約だったから、ここ」 夕希の言っていることが理解出来なくて、呆然と見つめることしかできない。 「なので……お世話になりました」 部屋に入っていく夕希に、どうにか足を動かして、鍵をかけられる前に玄関のドアを引く。 靴を脱ぐ夕希が、少し驚いたように目を見張った。 「……俺、好きなんだ、夕希のこと」 今にも泣きそうな声で、そう伝えた。
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