episode5

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 自分の部屋に帰って一目散に、寝室へ逃げ込む。  ベッドに仰向けになり、窒息しそうなほど枕に顔を押し付ける。  押し潰された自分の嗚咽がどこか遠くで聞こえた。  早くはやく、忘れたい。  夢だったと思えばいい。最初から、仲野夕希なんて存在しなかったのだ。  仕事に疲れて、癒しが欲しくて、勝手に自分で作りあげた幻想の男だったのだ。  まぼろしに恋をしていたのだ。だから今度こそ、忘れてしまおう。すべて。  「今日撮影がなくて良かったな」  翌日、ラジオ放送局に向かうと冬音に無表情のまま言われる。  朝、鏡を見て自分で自分の顔面に引いた。  泣き腫らしたせいで目は腫れているし、情けない顔で、世間に見せられるものじゃなかった。 ラジオ局には、丸いサングラスをかけて出向いたけれど、ふと外した時に冬音に顔を見られてしまった。  冬音の言う通り、本当に、テレビ収録や雑誌の撮影などがなくて良かったと思う。 「そんなに、嘘の熱愛報道がショックだったのか」  冬音に首を傾げられるけれど、「違う。それはもう、いい」と首を振る。 「じゃあ、どうした」  隣の部屋の大学生に振られて泣き明かしました。なんて言えるわけも無く、「別に」と返した。  それ以上詮索してこない冬音の距離感が、今は有難かった。  
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