episode5

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 3本分のラジオ収録を終えて帰る。リビングの時計は午後9時を指していた。    ベランダに出て、煙草をくわえる。  街中の明かりという明かりが点いていて、安っぽいイルミネーションのようだ。  夕希は帰って来ているだろうか。  もう、引っ越すって言ってたよな……。  最初から1ヶ月だけって、こんなタワマンでそんな契約あんのか。  どういう理由があってここに引っ越してきたんだろう。  彼女とどうして別れたんだろう。あの、大きなダンボール箱の中身は一体なんだったのだろう。  考えてみれば、夕希のことを全然知らないことに気付く。  そりゃそうだ。出会ってたった2週間ほどしか経っていないのだから。  それなのに夕希に、心を強烈に惹き付けられてしまった。  人としての憧れの感情と、恋愛感情。  どちらの感情も湧き上がらせてしまった夕希。  どこへ引っ越すのだろう。  こんなに広い街じゃ、きっともう二度と、会えない……。  夜景を見て思う。  会いてーな……。  視界が滲んで、また泣きそうになるのを堪えた。 明日は雑誌の撮影がある。腫れぼったい目でカメラの前に立つのはさすがに避けたい。  煙草の火を消して、リビングに戻った。  そして立て掛けてある、ギターを手に取る。  
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