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episode2
ペットボトルやら飴の盛られた籠やらが置かれた楽屋のテーブルの上に、昨日もらった菓子折りの箱が仲間入りしている。
菓子折りの正体は有名菓子店のマドレーヌだった。酒井の中身チェックも通り、そのマドレーヌにメンバー達の手が伸びる。酒井は楽屋を出たり入ったりと慌ただしくしていた。
「今どき律儀な人だね」
マドレーヌの個包装を破りながら、メンバーの山城咲久が言う。ぷっくりとした涙袋と大きな目が特徴的な咲久は、メンバーからもファンからも童顔だといじられている。けれど外見とは裏腹に、しっかり者でグループのリーダーである。
「で、帆多留はそのナカノって人に惚れちゃったってわけ?」
生放送の音楽番組の楽屋で、帆多留は昨日あったナカノとの出来事をメンバーに話したわけだが。
何をどう解釈したのか、咲久と同じくメンバーである美影伊月はそう言うと、にやにやとした笑みを浮かべた。襟足長めのウルフヘアを昨日赤く染めたばかりらしく、まだその髪色に見慣れない。
「はあ!? 何でそうなるんだよ」
支給されたミネラルウォーターを喉に通して、危うくむせそうになったマドレーヌをなんとか食道へ流し込む。
「確かに。帆多留がこんな熱心に誰かの話するなんて珍しいな」
もう1人のメンバーである白石冬音は、カメラの前でもプライベートでもクールな雰囲気を纏っている。
生まれてこのかた、染めたこともパーマもかけたこともないというさらりとした黒髪のマッシュヘアが、尚更その雰囲気を作り出していると思う。そんな冬音までが、伊月の話に乗っかり出す。
わざとらしくため息を吐いて首を横に振った。
「冗談だろ? 相手は男だからな?」
「でも帆多留って男性人気もあるじゃない? 男の子でも全然ありだよね」
にこにこと笑いながら言う咲久に、伊月も「ありあり」と賛同している。
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