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生放送を終え、マンションのエントランスに着いたのは日付が変わるぎりぎり前だった。
今日は朝から仕事がぶっ通しだったのでさすがに疲れた。
このままベッドにダイブしたい。でも風呂入んなきゃ。あーめんどいな。
部屋に着いてからの行動をシュミレーションしつつ、パスケースに入れたカードキーを取り出すためにジャケットのポケットに手を突っ込む。セキュリティ強化されたこのマンションは、エレベーターに乗るのにも、カードキーが必要だった。
しかし。
……ない。パスケースがない。
途端に身体中の体温が奪われていくような焦燥を覚える。
あるはずが無いことは分かっているが念の為にレザーのトートバッグを開いて隅から隅まで探してみる。やはりどこにも見当たらない。
――カードキーはちゃんとカバンの中に入れておかないと、落としたら大変だよ。
咲久の小言を思い出して、ちゃんと言うことを聞いておけばよかったと今更後悔する。
どうしよう。まず管理人に連絡して、それから警察に落し物届け出して。
誰か、悪意のある人に拾われてたらやばい。冷や汗すら溢れてくる心地だった。
つーかとりあえず今日の宿探さねーと……。メンバーの誰かか、酒井の家……は、妻子いるしな。
「あ、お疲れ様っす」
一気に色々なことを考え過ぎてエレベーターの前から動けずに居ると、後ろから声を掛けられる。
吃驚して目を見開いてしまった。隣に並んだのは、ナカノだった。
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