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CASE3
3年前――
民間科捜研に勤めている勝端は実家の病院にてただ1人作業をしていた。真珠に関する資料をただ1人眺めている。
「鏡伝次の子は鏡真珠じゃない…?」
勝端が作業している所にやって来たのは出水だった。
「伝次さんから何かあったのか?」
「うん。鏡さんの娘さんが被害者になった暴行事件知ってるよね?」
「ああ、被疑者が不起訴処分になった事件だ。合意があったとかなんとかふざけた事を言いやがって…」と言い、出水は傍にあった壁を思いっきり叩く。それを見て「こら」と勝端が宥める。
「そうやって、いら立ちをすぐにぶつけるのが圭ちゃんの悪い癖よ。昔からそういう所変わってないんだから」
「すまん」
気を取り直した出水は「そういえば、鏡さんから聞いた。伝次さんと娘さんは血縁関係が無いらしいな」と勝端に尋ねる。
「ええ、そうよ。何かがおかしいわ」
「じゃあ、一体誰なんだ…?」
時は流れて――
出水は伝次に3年前の事件の出来事を話していた。
「色々な事って…キャリアで将来有望だったお前が何故今ここにいるんだ」
「俺は敗北者ですよ。圧力に負けて貴方の娘さんを救う事が出来なかったんですから」と自嘲気味に言い、ココアシガレットを咥える。
「…」
「地獄でしたよ、自分が情けないくらいに。まさかだと思いましたけど真実を捻じ曲げるクソみたいな奴が平気で存在するなんて」
「私だってあんなのは不起訴処分と認めたくない…」
「俺は失望して警察を辞めた。その事に後悔していない。もし後悔があるとするならば…」
「なんだ」
「目を背けた事ですよ。真実と向き合う事にね」
伝次は答える事が出来なかった。視線を下に落としていく。
「そういえば鏡さんは今、寒白中学校の事務員として働いてるそうですね」
「何故その事を…?」
「風の便りってもんです。まぁ、あまり秘密を探り過ぎない方が良いと思いますよ」
出水の目は伝次を捉えていた。
ある日の放課後、円田は購買部の隅の部屋で、真珠に関するデータを閲覧していた。
「真珠ちゃんったら何でここの生徒会長に推薦されたのかしら」
そう円田が呟いた瞬間、「それは彼女が優秀だからです」と後ろから声が聞こえた。円田が振り返るとそこにいたのは鮮見だった。
「鏡真珠。彼女はとても優秀な生徒です。他の生徒もさることながら、彼女以上に優秀な人材はいません」
「それだけじゃないですよね?真珠ちゃんにそこまで肩入れする理由は何か理由があるんですか?」
「それを言うなら、円田さん。生徒の個人情報に関して少し踏み込み過ぎではありませんか」
鮮見は円田を怪しむように言う。
「ええ、確かに私は知り過ぎてるかも知りません。特に真珠ちゃんの事に関してね。彼女は3年前に連続暴行事件の被害者だった」
その言葉に鮮見は反応する。そして「何でその事を知っているんですか…」と円田の方を向いて尋ねる。
「私はこの学校の情報屋を自負してますよ」と円田。そして鮮見の脇に立ち「もしかしたら校長の秘密を知ってたりして…」とそっと耳打ちするかのように言う。
「貴方、一体何がしたいんですか?」
「それは、ヒ・ミ・ツ」
円田はまるで小悪魔な女性のように言い、その場を去って行った。
E4は生徒会室で時間を潰していた。
「次のターゲットは決まったのか、真珠」と箕田がシャドーボクシングをしながら尋ねる。
「全然決まってないわよ。暇なくらいにね」と呆れ気味に言う。
「問題児ばかりだからな。この学校は」と真久部。「それ、自分の事でしょ」と高木は真久部にツッコミを入れた。
「何か言ったか?これでもお前より成績は上なんだからな?」と真久部は高木に詰め寄る。
「分かったよ。訂正すればいいんでしょ」と高木は目線を逸らし答える。
「じゃあ、今度焼きそばパン1個買って来いよ」
「だから、僕はパシリじゃないんだって。助けてくれよ」と真珠に助けを求めるが、真珠は何やらスマホを見ており背中を向けている。箕田もヘッドホンを耳につけて聞こえないふりをしているようだ。すると突然、真珠が「見つけたわよ。新たなターゲットをね」と大きな声を出す。その言葉に3人の目線が真珠に集中する。
「今回も退学ゲームの始まりよ」
その頃、勝端は購買部に立ち寄っていた。
「あら、勝端先生じゃないですか。こんな所に何をしに来たんですか?」
「貴方に少し聞きたいことがあるのですが」
「分かったわ。少しの間だけ席を外してもらえるかしら」
円田はそばにいた購買の職員にそう告げ、その場を退出させた。
部屋には勝端と円田の2人きりになった。
「それで、元民間科捜研に勤めていた貴方が何故この学校に?真珠ちゃんの事に関して何か知られてはいけない何かがあるとか」
「何故その事を…?」
「私はこの学校の情報屋なんで」と言い微笑みを浮かべる。そんな円田を見て勝端は「ふざけないで!」と声を張り上げる。
「怖い顔しないで下さいよ。勝端さん。怒るとシワだらけになりますよ」
「揶揄うのもいい加減にして下さい。そんな事をして一体何がやりたいんですか!?」
「私はただ、真珠ちゃんの秘密が知りたいだけですよ。でも1つ知っているかも…?」
円田は何か含みがあるような笑みを浮かべていた。
一方、E4は今回のターゲットに関して会議が行われていた。
「今回のターゲットは3-Dの生徒である春山美樹」
言いながら箕田はタブレットを操作して顔写真を表示させる。すると、高木が早速呟いた。
「この顔、凄い嫌な感じ。病的にプライドが高そうだよ」
「くだらない。大体、人は顔だろうが」
真久部と高木が言い合いを続けている。箕田はそんな2人を宥めるかのように「落ち着け」と声をかける。
「まぁ、案外正解かもしれないわよ。この女、学年でもトップクラスの成績を誇るらしい。そして親戚は文部科学省のお偉いさん。こういう人間こそ何か裏がある」
「珍しく積極的じゃねぇか。一体何があったんだ?」
箕田は真珠の積極的な姿勢が不思議に思ったようだ。真珠はすかさず「校長が今回のターゲットを選んだのよ。何か文句があるの」と言い返した。
「ホントに校長を崇高してるのか」と真久部も驚いている。
「でも、あの人ってあまり生徒に関わらないんじゃ…」と高木。
「何故だか、私には関わってくれるわ」と真珠は自慢げに言う。
「それがお前が特別扱いされてるからだろう」と箕田。「まぁ、ある意味そうかもしれないわよ」と否定せず答える。
「さぁ、今回はどうしようか」と真珠はマーガレットの花びらをちぎりながら笑みを浮かべていた。全てちぎり終わった後、息を吹きかけ花びらを吹き飛ばす。
鮮見と勝端は共に保健室にいた。
「購買部職員、円田渚。彼女はあまりにも住む世界が違う人間です。彼女の経歴を調べました」
勝端は鮮見に1枚の紙を差し出す。それを見た瞬間、鮮見の表情が怪訝な様子になる。
「まさか、彼女が…?」
鮮見は何か知っている様子だ。それを見て「何かご存じですか?」と勝端は尋ねる。
「ええ、彼女は簡単に言えば裏社会に生きる人間です。不正アクセス禁止法で一度検挙された経歴があります」
「そんな人が何故ここに?」
「私にもよくわかりません。ですが何か弱みでも握られている可能性は十分あります。貴方も十分に気を付けてください」
「わかりました」
数日後の昼、円田は変わらず購買部にて仕事を続けていた。そこに高木がやって来た。
「あら、恭ちゃん。メロンパンを買いに来たの?」
「はい。焼きそばパンも1個お願いします」
高木は代金を払う。しばらくして円田はメロンパンと焼きそばパンを持ってきた。
「焼きそばパンって…また狩ちゃんが恭ちゃんをパシリに使ったのね」と円田は呆れ口調で尋ねる。高木は「そうなんですよ。助けて下さいよ」と円田に懇願するかのように言う。
「パシリ問題に関しては助けられないけど、助け船を出す事ならいくらでも出来るわよ。それで、今回のターゲットは誰?」
高木は春山美樹の名を告げた。すると円田は微笑みを浮かべる。
「どうしたんですか?」
「中々手ごわいターゲットを選んだわね。彼女は一筋縄ではいかないわよ」
「それはどういう意味で?」
円田は春山に関しての詳細を話し始めた。春山は成績優秀で容姿端麗であり、かつてはファッションモデルを務めていた過去があったそうだ。
「誰もが羨む経歴って事ですね。そして親戚は文部科学省の人。こういう人間をなぜ校長先生はターゲットに選んだのか…」
「まぁ、頑張りなさい。狩ちゃんにもパシリにされないようにね」
伝次は自宅でコーヒーを片手に新聞を読んでいた。しばらく読んでいた伝次だったが、とある記事を見て目が釘付けになる。
「まさか…?」
その記事は真珠が3年前に被害者となった事件と手口が酷似していた。不安からか手が震えコーヒーカップがカタカタと不気味な音を立てる。
放課後、E4は春山に関して調査をしていた。
「一見完璧に見えるけれど、こういう人間こそ何が欠点があるわよ」
「高木の言う通り。気が強い分、繊細な一面もある。そこを突いたほうが有効かもな」と箕田も言う。
「ね。言ったとおりでしょ?」と高木は皆に輝いた目を見せる。
「調子のんな」と言い真久部は高木の額を叩く。
「痛いよ」
「御託はどうでも良いからよぉ。さっとと情報を吐けよ。イレズミ」
「その呼び名だけはやめて欲しいよ」とぶつくさ言いながら春山に関する情報をノートパソコンに表示させた。
「電子パスの記録?」
「春山は電車で学校に通学している。だからそのパスカードのデータをハッキングして調べてみたんだ」
「ほとんど自宅の最寄駅からこの学校の近くの駅までの記録しかない。一体これで何がわかるのよ」
高木は真珠に問い詰められている。すると真久部は何かに気づいたのか「俺に操作を代われ」と言い、パソコンを動かす。
荒っぽい見た目とは裏腹に流れるようにパソコンを操作していく。そして「これだ…」と呟いた。
「え、何かわかったの?」
「今月は3日間だけ自宅の最寄駅と全く別の方向に向かっている。そしてそこから自宅の最寄駅に向かっているんだ」
「それも1週間ごと、水曜日だ」と箕田もパソコンを除きながら言う。
「でも、何が目的なのか…」と高木が怪しむように言う。
真珠も「私も見るわ」と言いマウスをスクロールしながら記録を最初から見ていく。
しばらくしてから真珠はある記録を目をつけて「…見つけた」と呟く。
「どうした?」
「春山はこのパスカードでコインロッカーを開けている。それも水曜日の夜よ」
「じゃあ、水曜日の夜に外出しているっていう事か」
「とにかく、円田さんからもうひとつ情報を貰わないとなぁ。高木、もう1回行って来い」と高木に命じる。
「だから、パシリじゃないんだって。今度は自分で行って来てよ」
高木も負けずと言い返す。真珠も「いい加減、自分で買ってきなさい。後、いちごミルクも追加しておいて」と言う。
「なんでなんだよ…パシられるのは好きじゃねぇのに」
「何か言った?生徒会長であるこの私に歯向かうつもり?」と真珠は真久部に詰め寄る。
「いや…」
「俺も塩むすびを頼むぜ」と箕田も乗っかってくる。
「箕田まで…分かったよ。買えばいいんだろ?また明日な」
「買って来なかったらタタじゃ置かないわよ。これは生徒会長命令だから」
乙霧は校長室に鮮見と共にいた。
「またですよ。退学者が1名出たみたいです。このままじゃこの学校の評価はガタ落ちです」
「彼女達は仕事をしてくれています。それの何がいけないのでしょうか」
「ですが、しかし――」
「この学校の風紀と秩序を守ることは彼女達にお任せしておけばいいのです。わかったらさっさと出て行ってもらえますか」
乙霧はそそくさと校長室を出て行った。鮮見はフンと大きく息を鳴らす。
翌日、真久部は1人で購買部に立ち寄っていた。
「なんでこの俺がこんな事をやらなきゃいけないんだ」と真久部は愚痴をこぼす。すると横から「聞こえてるわよ」と声がした。真久部が振り向くとそこには円田がいた。
「な、円田さん!?」
「あらら、今日はパシリにされてるんだ?」と円田は揶揄うように尋ねる。「違いますよ」と真久部は目線を逸らし答える。
「真珠ちゃんにこっぴどく叱られたのかな」
「まぁ、そういう事にしておいてください」と真久部は力なく答え、それぞれ品物を注文した。
「それで聞きたいことがあるんでしょ?春山美樹の事に関して」
「流石鋭いですね。教えていただけますか?」
「実は…」
そう言いながら円田が見せたのは1枚の写真だった。そこには春山がクラブに入店する写真がバッチリと写っていた。
「クラブ?」
「彼女の家は中々厳しいみたいよ。ホントに現代の感覚とは思えないくらいにね」
「それはどういう意味ですか?」
「それは自分で考えてみなさいよ。まぁ、でもこのクラブがいわば彼女にとっての憩いの場ともいうべきなのかもね」
そう言った後、円田はもう1枚の写真を見せた。
「これはつい最近、彼女は高級外食店に来ていたわ」
「何処で何をやってるんですか?」
「それは、ナイショ」
円田は人差し指に口を当てて『静かに』と仕草をする。真久部は時計を見て「俺は戻りますんで、失礼します」とお辞儀をする。
「じゃ、グッドラック」と円田は言いウインクをする。
放課後、E4は全員集まっていた。
「円田さんから情報を得た。春山はブランド物を購入したり、高級外食店に何度も出入りしていた」と真久部は写真を見せる。
「彼女のスマホをハッキングしてみたら、とある相手とやり取りしてた形跡が残ってた。どうやら、出会い系アプリを使っていたみたいだね」と高木は言い、そのやり取りが残っているトーク画面を表示させる。
「パパ活って奴か。お金の話までして、生々しさ満点だな」
「そして今日は水曜日、例のクラブに奴は必ず現れる」
箕田と真久部はそれぞれ言う。
「そして彼女の周辺状況も漁ってみたわ。中々厳しい家族みたい。そこから逃れる為にクラブに通ってるのかもね」と真珠もいちごミルクを飲みながら言う。
「とにかくこの女を退学に追い込むわよ」と言い真珠は生徒会室を出て行った。
その夜、春山を尾行していた真珠はクラブに入店しようとした。すると何者かが真珠の腕を掴んだ。真珠は引きはがそうとするがその腕は中々振りほどけない。
「離して‼」
「俺だよ。俺」
真珠はその声に後ろを振り向く。よく見るとそれは出水だった。アロハシャツを着て派手な出で立ちだ。
「出水さん⁉」
「勝端から大体の事情は聞いた。ターゲットがこのクラブに出入りしてるんだってな」
「これは私たちの――」
「こんな時間まで出歩いたら伝次さんが心配するだろうが。俺から言わせればお前はまだ子供だ」
まだ終わらなそうな真珠の不満を遮るかのように出水は言った。
「この場は俺に任せろ。こう見えても俺は元警察官だ。そう簡単にはやられねぇよ」
出水は意気揚々としてクラブに入店していった。それを見た真珠はスマホを取り出して誰かに電話し始めた。
店内に入っていった出水は満遍なく室内を見渡している。するとそこに春山の姿が見えた。どうやら男2人組と何やら親しく話をしているようだ。
「さてと、やりますか」
そう呟いた出水は酔っぱらったふりをして春山に絡みに行く。すると男2人組が「何だ、お前!」と言い出水の腕を掴む。だが、出水はなりふり構わず2人を振りほどき暴れまわった。そして春山の隣に座る。
「よぉ、お嬢ちゃん。こんな時間まで出歩くのは心身とも毒だぜ?」
「何よ、おっさん。私に構わないで!」
「おっさんとは失礼だなぁ。これでもまだ若いぜ」
春山は席を立ち、クラブから退店していく。
「お前、一体何者なんだ!?」
「名乗るほどのものじゃねぇよ。良いのか?俺はこれでも元警察官だぞ。未成年者をここに入れていたとなれば、ここは潰れるだろうな」
すると後ろから蹴りを入れられた。出水を蹴っ飛ばしたのはなんと円田であった。
「このどうしようも無い男は私が連れて帰ります」
円田は出水を引きずりながらクラブを退店していった。
その後、出水が連れられてこられたのは勝端のいる病院だった。出水はあちこち傷だらけだ。勝端は出水を治療している。
「どこの馬の骨か知らん女に蹴っ飛ばされた。痛かったぜ」
「ふーん」
素っ気なく返した勝端は傷になっている所にアルコールを含んだ綿を当てる。出水はその痛みに悶絶する。
「痛ってぇな。もう少し優しく出来ねぇのかよ。藪医者が」
「ああ⁉何か言ったか⁉一生起きないような麻酔を打ってやろうか⁉」
勝端はいきなりドスの利いた声で威圧する。その様子に恐れたか、出水は「いや…冗談です」と委縮する。
「ホントに滅茶苦茶な事やって。一体誰に連れてこられたのよ」
「それは私の事かしら?」
そこにやって来たのは円田だった。
「なんで貴方が…?」
「言ったでしょ?私は情報屋だって。真珠ちゃんの頼みで先に潜伏していたのよ。アロハシャツを着た男が暴れたら連れて帰るようにね。それは置いといて退学に追い込むだけの決定的な証拠は掴んだわよ」
円田は1枚の写真の写真を2人に見せつける。そこに写ってたのは春山が飲酒をしている瞬間だった。
「偽造IDカードを使っていたかもしれないな。外見だけなら成人に見えてもおかしくない」
「これを使ってパパ活をしてたって事ね。じゃあ後はごゆっくり」
円田はそう言いその場から去って行った。
「あの女、只者じゃねぇ…」
「何か弱みを握られないように気をつけた方が良いわ。油断していると寝首を掻かれるわよ」
2人の間を微妙な沈黙が流れていた。
翌日、学校の掲示板前はある写真が騒然とさせていた。それは春山がクラブで酒を飲んでいる写真だった。それを見た春山は顔を赤くしている。
「何なのよ!これ!」
「パパ活なんかして、楽しかったかい?」
声をかけたのは高木だった。その脇には真久部もいる。
「な…?何で貴方がここにいるのよ!?」
「何でかはご想像にお任せするよ。でも残念だったね。姿その物は化粧すれば20歳に見えるけど、衆人環境で欺くのは無理って訳」
「所詮お前は平凡女子って事だ」と真久部も追い討ちをかける。
「ぐっ…バカにしやがって…」
「僕は天才ハッカーだから。君がクラブに入店していた記録やパパ活アプリを使って多くの男に金を貢がせた事も全て筒抜け」と言いながら親指と人差し指で輪っかを作り、それを目に当てる。
「ふざけないで…さっきから聞いてりゃあいい気になりやがって…!」と言い春山は高木の胸倉を掴む。すると真久部が間に入ってその手を捻り上げた。
「痛い!離して!」
「そう言われて手を離す奴なんかいねぇよ。E4に楯突いた罰だ。テメェの学校生活はここでピリオドだ。さっさと退学届を書いてこの学校から去りやがれ」
真久部は掴んでいた手を離す。振り向いて高木と共にその場を去って行った。
真珠は鮮見に今回の顛末を報告する。
「出水君が…?」
「はい、出水さんが今回、春山の居場所に潜入をしたそうです」
「まさか…あの後以降、姿を見せていませんでしたが、元気でしたか…」
真珠は頭にクエスチョンマークが浮かんでいるような様子を見せる。それを見た鮮見は「いいえ、気にしないでください」と答える。
「貴方達は引き続き『R計画』を実行してください」
「分かりました」
真珠は一礼をして校長室を去っていった。
出水は1人で木春菊で暇を持て余していた。そこに円田がやってきた。
「お前はあの時の…」
「あら、ごきげんよう」
円田はおやつカルパスを1つ頼む。
「自己紹介が遅れたわね。私は円田渚。吉菜高校の購買部職員よ」
その言葉に何か思い出したか出水はハッとする。
「まさかお前が…」
「思い出した?私はハッカー『サークル』よ。あの時は悪かったわね」
「…それで俺に何の用だ」
「この私と手を組まない?真珠ちゃんの重要な秘密を教えてあげる」
「何でお前なんかに…ふざけるなよ。お断りだ」
「そんな事言って良いのかしら?3年前の事件に関して知られてはいけない事を真珠ちゃんに全てバラしてもいいのよ?」
出水と円田は互いに目を見据えていた。
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