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食器を洗う水音に重ねた食器のぶつかる軽快な音。
差し込む日差しを反射して、私が集めたスフィアに当たると、スフィアの色を吸収して部屋に拡散する。
白を基調とした部屋に水色のスフィア色が取り込まれて、水面のように揺れるそれはオーロラのような美しさを演出する。
「ユーフィー、スフィアの無駄使いはやめなさいって教えたでしょ」
「いいじゃん、減るものでもないし」
スフィア。
それはこの宇宙に無限に広がるエネルギーのようなもの。
自然エネルギーのひとつとされているけど、その全容は解明出来ずにいるらしい。
けれど私はその一部なら知っている。
「それじゃあ今日も食材取りに行ってくるね」
「気をつけていくのよ、それから龍族の地には入っちゃダメよ」
「わかってるよ、とっても危険なんでしょ、耳にタコが出来るくらい聞いてるよ」
「なんならタコをつくってあげるわよ」
「怖いからやめてよ、本当に出来そうじゃん」
「ふふふ」
お母さんとの何気ない会話を交わして私は赤レンガで出来たマイホームの扉を開いた。
雄大なこの惑星の小さな農村。
私とお父さんとお母さんしかいない村と呼べるかも怪しい土地。
そこはひとたび脚を踏み出すと。
『ギャァァオォォォ!』
「今日も何処かで獣じみた声が響いてるなぁ」
死と隣り合わせの危険な日常。
うら若き私には似つかわしくない環境かもしれない。
それでも私は刀を握る。
刀身は私の腕よりも短い短刀だけど、装飾した金属とスフィアを練り混ぜてつくった自信作。
色合いに富んでいる世に1本しかない自作スフィア刀。
振るえばその軌跡は朱く色付く。
朱色を好む私には自慢の一振り。
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