聖戦と呼ばれた1日

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「がっ――」  吹き飛ばされた師匠が視線から消えると同時に私の眼前にも拳が現れ、腕にスフィアを纏わせて防ぐが、まるで意味をなさない。  腕に鈍い痛みが走るより早く木に背中を打ち付けて、更に木はなぎ倒される。  血反吐は吐かなかったが、身体が痛みのショックとその衝撃で呼吸が止まる。 (ダメ、呼吸をしなきゃ、前を向いて視線を逸らしちゃダメ)  意識は強く保たれるが、身体がついてこない。 「調子に乗るなよ!」  師匠がスピリッツの頬を捉え、次はスピリッツが吹き飛ばされる。  ピンボールのようにあっちこっちに吹き飛ばされている両者だが、圧倒的にこちらの方が体力を削られている。 「ふっ……ふっ……」  横隔膜が反応するのを感じながらゆっくり呼吸の時間を長く、大きくしていく。 「この力に抵抗するのは貴女達ぐらいですよ!」 「そんな腐った魔法がまかり通るのは許せないものでな!」 「スフィアこそ法則を無視した力とは思わないのですか!」  師匠とスピリッツは口喧嘩とともに拳骨を交わし合うが、その1回1回に吹き込まれた魔力が爆ぜ、大気がその都度、吹き荒れる。 「きっついなぁ、もう……」 『もう少しだよ』  精霊が私に話しかけてくる。 「もう少し?」 『うん、あの魔力はスフィアを変換してるから正しい魔力じゃないんだ、それにアポトロスの魔力も制御しきれてないから、身体が魔力に悲鳴をあげてる』 「自爆、してるってこと?」 『うん、それに、魔力が泣いてる(鳴いてる)よ』 「……精霊達の声ってことだね……」 『助けてあげて』 「あんまり期待しないでよ」  私は膝に手を乗せて歯を食いしばりながら、立ち上がる。  肋骨が軋み、痛みが常に神経に刺さり、目からは自然と涙が流れる。 「んんんんっ!」  立ち上がると同時に師匠が私のすぐ横に吹き飛ばされてくるかま、振り向く余裕はない。 「フフフフフ、やっと衰えてきましたネ」  スピリッツの気味の悪い笑みに、血と土埃の匂いが混じり、それだけでも気分が悪い。  師匠は血反吐を吐いて、魔力で出血を抑えるので精一杯になっていた。
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