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「いたたっ、なんかズルしたでしょ!」
「なにを言う、これはれっきとしたスフィアと魔法の応用だ」
「魔法?」
私はこの雄大な自然の中で両親に丹精込めて育てられた結果、この家以外の文化を知らない。
魔法などというものは見たことがない。
けれど絵本で読んだことはある。
そんなもの、スフィアより――。
「スフィアより便利と思っただろう?」
心を読んでみせて、勝ち誇るように笑う魔女。
迂闊にも驚いてしまい、図星をつかれたのがバレバレとなってしまい、言い返す言葉がない。
「しかしこれが燃費が悪くてな、魔法だけというものは一部の才能人しか扱えない」
魔女は三角帽子を深く被り、演出らしく視線を切ると、指をたててほくそ笑む。
「これを補助する為にスフィアを用いるんだよ、そのエネルギーとして、増幅器として、制御装置として」
「ちょっとよくわからないです」
「そうだろうな、だが、それを知りたくはないか? 知れば龍族くらいなら容易く倒せるぞ?」
私の中で知っている最も恐ろしい龍族を容易く倒せると謳うこの魔女、言ってることに嘘は感じなかった。
怪しくはあるがそれを越えようとする私の好奇心もあった。
なにより心の奥をざわつかせたのは発言や身なりから見て取れる、「外の世界」の気配。
外の世界は私の夢だった。
この広く狭い箱庭を抜け出して、知らない世界を見て回れることをどれだけ望んできたか。
そんな私の答えは紐を解くより簡単だった。
「……知りたい!」
「よく言った」
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