聖戦と呼ばれた1日

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「これは少々まずいな……」 「師匠が珍しく弱音ですね、やめてください縁起でもない」 「どうにか無理をしていたが、腕と脚が随分やられているみたいでな」  ゆっくり振り返ると、血だらけで脇腹を抑えた左腕と、ぶらんと垂れた右腕。  戦闘してたのが嘘のように傷だらけ。 「師匠、どうしたら倒せる?」  私には倒せるビジョンが見えないでいる。 「それがわかっていたらもう倒してるぞ?」 「なんか裏技的なのないの?」 「そんな都合の良い――」  訝しげにした表情が固まり、申し訳なさそうな表情に変わる。 「なくはないな」 「どんなの!?」 「彼奴と一緒のことをすればいい」 「えっ……」  余韻に浸るスピリッツは自身の身体に起きる異変に気付き始めていた。  手を握りしめ、ぎこちない指先の動きを噛み締める。 「何をこそこそしているか存じ上げませんが、そろそろ終わりにしましょう」 「その鼻先をへし折る算段だな」 「そんなぼろぼろでどうやって私の鼻先をへし折ると?」 「それは此奴に身体で聞いてみろ」  師匠は私を指さした。  スピリッツは師匠の魔力、スフィアが空になっていることに気付いてはっとした。 「まさか!」 「そのまさかだ、其方が若い頃研究していた万人(・・)を救う魔法、託授(リーブ)」 「あの魔法は波長を合わせるのが難しくて……」 「それはスフィアが解決してくれたんだ」 「完成させたのですか……?」 「其方の夢だったからな」  師匠とスピリッツの過去。  それはきっと悪いものばかりではなかったのだろう。  2人の表情が色濃い過去を示していた。  示しているけれど。
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