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旅の始まり、師匠と歩いた道をゆっくりと引き返す。
師匠は空を揺らめきながら移動し、私はそれを眺めながら歩く。
あの時と同じ道を引き返すだけだが、発見と新鮮だった数日前とは打って変わって、悟ったような面持ちが私の心に張り付いている。
世界を見て、人を知り、戦争を見た。
日が暮れて、空が橙色に染まる頃、私は1つ溜息をついた。
この先に我が家がある。
だけど、今までの人生と何かが変わる、そんな予感がするのだ。
『ご主人様の家はどんなところ?』
精霊が私の肩に乗っている。
「んー、暖かくて優しくてうるさいところかな」
お父さんとお母さんの顔が浮かぶ。
『スフィアを使えるんでしょ? 早く会ってみたいなぁ』
「そんな期待されることじゃないよ」
きっと帰ったら泣いたり笑ったり怒ったりするだろうな。
お父さんは絶対泣いてるし、お母さんは暖かく笑ってると思う。
師匠とはこれでお別れなのかな。
思いを馳せることが多すぎるのに、心は何処か落ち着いていた。
「そう言えば、名前なんて言うの?」
『僕に名前はないよ』
「えっ、そうなの?」
『名前があるのは四大精霊と精霊王、精霊神くらいだね』
それぞれが神話に出てくるような存在で、実在するとは信じていなかったが、四大精霊は人の世に顔を出すこともあるらしい。
「そうなんだ、偉くならないと名前は付かないのかぁ」
『精霊が名前を名乗っていいのは別世界との争いで、その功績を認められないといけないんだよ』
「精霊の世界もシビアだね」
『そんなことはないよ。 普段は自由だからしがらみはないんだ』
くだらない話を続けながら、帰路をまったりと歩いていく。
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