聖戦と呼ばれた1日

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「……巻き込んだ形になってすまんな」  突然師匠は謝罪の言葉を述べて、呆気にとられた私は言葉を失った。 「本来はもう少しゆっくりするつもりだったのだが、如何せん力を戻すのにもう少し掛かりそうでな」 「……えっ? どゆこと?」 「妾が封印されていたというのは話したな?」 「うん、なんか最初の頃に聞いたかな?」 「1ヶ月前まで封印されてたんだ、20年ほどな」 「……えぇぇぇぇ!?」  封印されていた期間が私の年齢を超えてるのは置いといて、そんな人間があんな大暴れするなんて、いよいよ師匠は人を捨ててるのではと疑わしくなる。 「まぁなんだ、これからは師匠らしいことをしてやるからな」 「あっ、やっぱり続くんだね」 「不服か?」  一瞬考えるが、答えは出ないだろうなとすぐさまに悟る。 「次の目標とかあるの?」  今は答えは出なくてもいい。  ただ自分が何を目指すのかは見えておきたい。 「ふむ、そうだな、ユーフィーにはスフィアの基本を叩き込むところからだな」 「基本かぁ」 「最初にも言ったが、スフィアはある事象に対して『変化を促す』力だ。 其方の使っていた力はスフィアそのもので戦っていたに過ぎないんだ」 「つまり?」 「脳筋プレイだったということだな」  師匠は小馬鹿にするように笑いを一瞬吹き出したが、わざとらしく真面目な表情で、キリッと私と目を合わせる。 「少しはお休みはもらえる?」 「勿論だ、その間の衣食住は任せたぞ」 「なんでよ!」  ケタケタと笑いながら師匠は飛び去り、私は怒りながらそれを追いかける。  そうして家に着くと師匠がお父さんお母さんに頭を下げていた。  その言葉は聞こえないが、みんなの表情、先程の師匠との絡みから話の流れは何となく想像できた。  お父さんもお母さんも泣いたり笑ったりはせず、頭を下げる師匠に顔を上げてもらうように促して、会釈を返した。  私がしり込みをしている姿を見つけたお母さんは手招きをしながら。 「おかえりなさい、ユーフィー」  そこには想像していた通りの笑顔があった。  胸につかえていた緊張感の欠片を払い除けるようなその笑顔に私は知らず知らず涙を零していた。 「おぅおぅ、泣き虫は変わらなかったか!」  お父さんも私を見て、小馬鹿にしながら笑い散らかしている。 「お父さんの馬鹿」 「ななな、なんでだ! 反抗期か!?」 「今のはあなたが悪いですよ」  そこには確かな家族の温もりがあり、私が守るのはこの日常だと再確認した。  この時はすぐにやってくるこの星の闇には気付いてもいなかった――。 ――――fin。
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