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彼と一緒に居る人。
それは隣のクラスで人気のある可愛い女の子
だった。
何を話してるかはこの距離からは聞こえない。
ただ何をしてるのかはハッキリと分かった。
彼がその女の子にある物を手渡す。
それは金色に光るボタン。
見間違えるはずのない、制服のボタンだ。
「あっ」
思わず両手で口元を抑えた。
さっきまでドキドキしていたはずの胸は、今度は
ジクジクと痛んだ。
胸が痛い。
息を吸うのも苦しいほどに。
そのボタンをもらった子は恥ずかしそうに微笑んだ。
可愛い女の子。
私が頑張ってもなれないくらい可愛く見えた。
急に、今までやっきたことがバカらしくなった私は
回れ右をして待ち合わせの場所を去る。
私が欲しかったはずのボタンは、あの女の子の手に
渡ってしまった。
それは仕方ないことだって分かってはいるけど
溢れる気持ちは止められない。
行く宛もなく駆け込んだ早朝の誰も居ない教室。
自分の席に座った私は呆然と黒板を見つめた。
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