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胸の辺りまで伸びた髪。
迷いはなかった。
生え際を掴み、ハサミを入れた。
自分の手の中にあるのは、私がずっと嫌いだった私の髪の毛。
ごみ箱に落とすと少し心が軽くなったように感じた。
何度も何度も。
長く伸びた髪が全て私の身体から落ちるまで切った。
今まで当たり前にあったのに、自分の体の一部が無くなったのに、私は少し嬉しくなった。
テレビの中のアイドルのように、鏡に写っているのは泣き腫らした顔の坊主頭の女。
こんな私を見るのは初めてだ。
綺麗とは思えないその姿の私が、その時の私にとっては今の私に最も相応しい姿だと思った。
けれど、その姿一つで誰も救われなんてしなかった。
私の心が軽くなったように感じたのも、髪の毛の重さ分だけ。
私がごみ箱に入れたのは、ただの髪の毛でしかない。
その姿を残すこともなく、私が坊主にした過去なんて無いものと同じ。
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