致死量

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薬と言っても家にある瓶に入った風邪薬。 それで良かった。 風邪薬を用量を守らずに飲んだらどうなるのか。 私はその時にはもう知っていた。 その経験をした人の記憶が私の中にあったから。 その時は大量に飲みたいという気持ちでは無かった。 ただ、眠りたい。 眠るために薬を飲もうとしただけだった。 一粒。また一粒。 身体の中に入っていく数が増えていく。 そんなすぐには効果なんて出ないのに、今すぐにでも眠りたかった。 だから私は薬を口に運ぶのを止めなかった。 まだ効かない。 まだ足りない。 あるだけの薬を全て手のひらに乗せ、口の中に入れる。 口の中で待っている薬を水で流し込もうとしていたら、順番に喉を通す事はできなかったので、塊のまま喉から下へと押し流していった。 水を飲み続ける事でゆっくりと下に流れ込んでいく塊。 この塊が私のお腹の中に入る事で何が変わるというのだろうか。 それでも、これで私は眠れる。 今はただ何も考えず眠りたい。 そう思っていた。 けれど、数分後に私を襲ったのは眠気ではなく、猛烈な吐き気だった。
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