エストレリャス

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『邦文学の心根 ノベル(小説)の心意気』 若くしてピュアなる人物の 「青春『 のつそつ』 体験」が、 カリカチュアライズされた キャラクター、 デフォルメされたストーリー、 リズミカルな文体で描かれる。 作家の孫(夏目 房之介)が 漫画コラムニストだから 言うのじゃないが、 漫画より漫画的、 愉快真っ当な小説だ。 ハンディカメラで撮った シチュエーションコメディ さながらだろうが、 ヒーローが明後日(あさって)の方に 突き抜けてしまおうが、 ヒロインが全体婆さんであろうが、 お約束のロマンスが からきし無かろうが、 読み手に「猫」のヒゲ一本分の 感性(センス)があれば 鼠は獲れなくとも… 正体の有る文字(もんじ)に 宿る反骨精神が、 世代と性別を超えた、 友愛、好意、心情とに変化して、 デノテーション(*)と、 コノテーション(*)の 間(はざま) を 絶妙のバランスで 渡って還(かえ)る様が見て獲れる。 文脈に気概有り。 それゆえ漱石は 「我等が文学」なのだ。 「が」は連体格である。 デノテーション(*)=言語記号の 文字通りの意味。外示。 コノテーション(*)=言語記号に 含まれている言外の意味。 共示。含蓄。
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